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「五島列島」旅 その10(奈留島) 江上天主堂・森の中に佇む世界遺産候補の教会

一人旅の魅力の一つは気に入った場所に気の済むまでいられることだと思うのです。どうも、いづやん(@izuyan)です。

五島列島旅の第十回をお送りします。福江島から奈留島に渡り、この島に来た目的の「江上天主堂」へ向かいます。


樹々の中に佇む「江上天主堂」

奈留島港からスクーターで20分ほど、ひとつ山を越えた廃校脇の林の中に、その姿はありました。そばには小さな川もあり、水音が絶え間なく聞こえてきます。

小川にかかった小さな橋を渡る前から、樹間に三角屋根の白い姿が見え隠れしています。そのひっそりした雰囲気に、近づく僕もいつの間にか息を潜めていました。

樹々を抜け、その前に立つとただため息が出るばかりです。

江上天主堂は1918年に建てられたそうです。そして、やはりこの教会も鉄川与助の設計と施工。近づいてみると白だと思っていた木の壁は薄いクリーム色でした。アクセントのように掛けられた水色の窓が印象的です。周りを囲む林と相まってどこか童話めいた雰囲気すら漂います。

近づいてみると、100年近い風雨に耐えてきた跡が外壁や屋根に見受けられます。海にも近く、そばを川が流れる林の中にあり、湿気もかなりあったにもかかわらず、木造の建築物が100年を経てもこの姿を保っていることに驚きを禁じ得ません。

パンフレットでこの江上天主堂をみたとき、「これが世界遺産候補の教会と言われてもいまいちぴんと来ないな」と率直に思いましたが、目の前で佇まいを見ただけでも100年の風雨を経てきた風格すら漂っていて、候補に入ったのもさもありなんと考えを改めました。


信者の手描きがあちこちに残る静寂の空間

正面のドアを静かに引いて中を伺うと、出島ワーフのインフォメーションセンターに教えられた通り、確かに10人ほどの人がすでに教会内にいて、教会守りと思われるおばあさんの説明を聞いている最中でした。

静かに堂内に入り、席の後ろに立って説明の輪にそっと入ります。説明が終わり団体さんが外に出た後に、教会守りの方が「どこから聞いてましたか? 最初から説明しましょうか?」と声をかけてくれたので、ありがたく最初から説明をしてもらうことにしました。

教会の歴史、2018年に100年になること、信者の方々がキビナゴ漁をして資金を貯めて建てたこと、その費用は今のお金に換算すると1億くらいもかかっていること。

教会内の柱の木目が実は信者たちの手書きであることにも驚きました。午前中にステンドグラスを通して祭壇付近に光が指すことは「ちょうどミサの時間を考えてそうしたのかもしれませんね」とおっしゃってました。

また、湿気の多いこの場所でいかに教会が守られててきたかもお聞きできました。屋根の構造として、裏に設けられた椿の花の形の通気口や、枯れ葉が詰まってその場所が腐食することの多い雨樋を設けなかったこと、高床式であること、などなどを教えてくれました。

ステンドグラスも手書きとのことで、今まで見てきたレンガ造りの教会以上に、信者の方々の息遣いが感じられる教会です。


いつまでもいたくなる教会

そんな江上天主堂ですが、現在は月に一回だけミサを行っているそうで、専属の神父はおらず教会守りのこの女性が鍵を管理しているそうです。月一度とは言え、現在もれっきとした教会なので、中の撮影はNGです。そして、2015年1月に「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」として世界遺産に推薦された、五島列島に4つある「世界遺産候補の教会」の一つなのです。

団体さんがいなくなり、自分の他には教会守りも含めて3人しかいなかったため、教会の中は静かです。

「ここにしばらくいていいですか、とおっしゃる方も結構いらっしゃるんですよ。静かな、窓を開ければ川の流れや木々の葉の音だけが聞こえてくるこの場所を気に入って、しばらく座って過ごすんです。」

僕もすっかりこの教会が気に入ってしまったので、特に何をするでもなくしばらく椅子に座って過ごすことにしました。開けた窓からはやはり川の音が聞こえていました。(続きます)

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