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【島人に聞く】唄って踊る太鼓奏者 小澤さとさんインタビュー

面白い人にはどうしてもじっくり話を聞かせてもらいたくなって仕方ないです。どうも、いづやん(@izuyan)です。
このサイト「ISLAND TRIP」では主に島旅レポートや離島に関する情報をお届けしていますが、ずっとやりたかったことに「島に縁のある人の取材・インタビュー」があります。今回は記念すべき「島人インタビュー」第一回です。


新島出身の踊れる太鼓奏者にして唄者

2015年2月、西新宿の「青ヶ島屋」さんの一周年記念パーティ。その余興の席で伊豆諸島の唄を披露する元気なお姉さんがいました。それが小澤さとさんとの出会いです。

よく通る唄声、抑揚をつけて紡ぎだされる旋律、それに負けない愉快なおしゃべり。いつの間にか手拍子をしながら聞き入ってました。

小澤さとさんは伊豆諸島は新島出身。小さい頃は父親の仕事の関係で伊豆諸島の各島を移り住み、最終的に新島に落ち着いたのだとか。

「そのおかげで、新島だけではなく他の島の音楽、文化にもバックグラウンドがあって、それが今の私を形作っていると言えます」と小澤さんは言います。

学生時代は人文学科に所属、フィールドワークとして、各地の伝統文化を学んでいたそうです。卒業後は様々なスタイルの和太鼓を学びながら、主に舞台を中心に活動。しかし2011年の震災を機に、自分の活動を見つめなおしたと言います。

「それまでは舞台での表現を中心に活動していたんですが、2011年の震災があって色々考えることがあって。『自分の生まれた土地の在り方、そして芸能や音楽を見つめ、深めたい』と思ったんです」

もっと和太鼓の表現を追求したいという思いはそれまでもあったそうですが、震災以降ではそこに新島や伊豆の島々のために、という視点も加わることになります。


震災を機に活動の場を広げる

何か行動をしなければ、という思いは、早速その年の新宿駅で年に数回開催される伊豆諸島の特産品販売イベント「東京愛らんどフェア」で披露の場を与えられます。

各島PRや芸能を披露するイベントステージで、新島民謡と太鼓演奏、自作の「新島あめりか芋の唄」を演奏することに。

たまたまイベントステージが青ヶ島ブースの目の前だったこともあり、青ヶ島の還住太鼓奏者として活躍していた荒井兄弟の演奏に感銘を受けたり意見をもらったりして、一緒に活動をすることになったのだとか。

それからは、荒井兄弟ほか伊豆諸島のミュージシャンとのユニットや、他のプロジェクトに参加、アルバムをリリースしたり、音楽フェスやライブイベントに参加するなど、精力的に活動を続けてきました。


青ヶ島屋一周年パーティーの時の様子

地元新島の古い唄の保存活動も

そんな小澤さんが自身の表現のための音楽活動の他に、もうひとつ個人的にやっている活動があります。

「古い唄や踊りなどの文化がある土地ではそれを保存しようという活動がありますよね。新島でももちろんそういった取り組みはしているんですが、散逸したり残っていないものも多く難しい部分もあって、私にも何かできないかなと」と自主的に古い唄の収集活動を開始。

新島村博物館には、資料の中に古い唄の記録があるので、まずはその唄者を当たってみようとしたそうですが、ほとんどが亡くなっていたりして「こりゃいかん」と思い始めます。

ほかに古い資料がないか探して見るも本当に残っておらず、「各ご家庭に残っている祭りのビデオやテープなら残っているのではないか」とそれを集め始めることにしたそうです。

そこに見たのは、いかにものんびりとした新島らしいエピソードでした。

「カセットの記録で、島のおばあちゃん達が延々唄を歌っていて。でも聞いてると途中から島の唄とは全然関係ない当時の歌謡曲を、さも島の唄っぽくアレンジして歌ってる。それが本当におかしくて」

「新島って『ゆるい』んですよ。そういう空気が唄にも出てるのかなって。伊豆諸島の島って流刑地だけど、新島は八丈島とかと比べると本土と近いから、罪状が軽い人がほとんど。もしかしたら新島に伝わる唄も、都でちょっと『おいた』しちゃった人たちが、流行り唄を酒の席でビデオの中のおばあちゃんみたいにオレ的アレンジを繰り返し施していった結果なんじゃないかって。文化ってそうやって広がって行くんじゃないかって思うんですよ」

この新島の唄文化収集が、今後どうなっていくのか本当に楽しみです。


流派の垣根を超えて

本来、伝統芸能では「流派」にこだわってそれを守っていく、というのが基本スタンスですが、小澤さんはこう言います。

「自分には新島以外のルーツもあるし、もっと多くのものに触れたいと思っています。各流派とか文化の人たちから見たらそれは邪道なのかもしれないけど、私が様々な文化の特徴をうまく伝えられれば、それに興味を持ってくれた人がいつかそのルーツである文化に触れてくれるかもしれない、そういったハブ(中継器)に私はなりたいんだと思うんです」

持ち前のポジティブさで、様々な太鼓の文化を吸収していきたいと考えて、地域の太鼓の流派の門を叩きます。ただ、その流派の人たちからすると、守ってきた伝統の重みもあり、よそから来てそれを吸収したいという小澤さんの思いは、最初はよく思われないこともあり断れることも。それでもそのルーツに興味を持ってもらいたい、太鼓という文化を広めたいという気持ちを、根気よく説明して理解を得ているのだとか。


新島との繋がりも続けて

小澤さんは現在都内に住んでいるそうですが、ちょくちょく地元新島には戻る生活をずっと続けているのだとか。島と都会、両方の環境に身を置くことで表現活動にもいい影響を与えているのではと感じられます。

9月6日には、小笠原の唄を演奏するアーティストのOkeiさんと国立で共演するライブも開催。近々レポート記事も書きたいと思います。小澤さんが様々な島の音楽文化をどう伝えていくか、これからも注目したいと思います。

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